友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
 私は今、猛烈に悩んでいる。
 莉子ちゃんのアドバイスを、決行するかどうか。

『こっちがガンガンいかなきゃ、仲良くなんてなれないよ!』

 そんな彼女の明るい声が、頭の中で何度も再生されている。
 自分から行動しない限り一生繰り返されるくらいなら、さっさと打ち明けたほうがいいだろう。

「あ、あのさ!」

 愛の巣へ帰宅後、思い切って靴を脱いでいる途中の彼へ背中から声をかけた。

「このままじゃ、一緒に住んでいる意味がないと思うの!」
「何を言うかと思えば……」

 夫は革靴を脱ぎ終えたあと、呆れたように肩を竦める。
 こちらを振り返って見下す表情は、真剣そのものだ。

「これは、正しい友情結婚の形です」
「わかってる。蛍くんは今の生活に、不満がないってことくらい! でも……っ。私は寂しいし、悲しいよ……!」

 私がどれほど間違っていると伝えても、彼には届かない。
 それが悔しくて――。
 目元には、涙が滲んだ。

「泣くほど、今の生活が嫌なんですか」
「だって……! せっかく、夫婦になれたんだもん……! もっと、蛍くんを知りたいよ……!」

 夫婦が円満な生活を送れるように願うのは、いけないことなんだろうか? 
 私にはそれが、まったく理解できなかった。
< 115 / 238 >

この作品をシェア

pagetop