友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
「こうなるから、言いたくなかったの……!」

 今、凄く苦しい。
 素直な気持ちを吐露したら、蛍くんを傷つけるってわかっている。
 なのに、唇からは心の中で押し留めきれない感情が溢れ出す。

「こんな思いをするくらいなら、友情結婚なんてしなきゃよかった……!」

 涙でぐちゃぐちゃになりながら、最低で最悪な発言をしてしまった。
 私はすぐさま瞳から零れ落ちる雫を小さな指先で拭い、さり気なく彼の反応を窺ったのを後悔する。

 ――蛍くんはまるでこの世の終わりと言わんばかりに、大きく目を見開く。
 そして、青ざめた表情で絶句していたからだ。

 この関係をずっと続けたい。
 そう思ったからこそ素直な気持ちを伝えようとしたのに、部下を傷つけてしまった。

「ち、違……っ」

 私はなんて酷い上司なのだろう。
 最低で、最悪で、取り返しのつかないことをしている。
 今さら言い訳なんかしたって、もとの関係に戻れるはずがない。

「ごめんなさい……!」

 こうやって謝るのが、精一杯だった。

「菫さん!」

 肩から貴重品の入ったショルダーバッグをかけていたのが功を成す。
 私は蛍くんの静止を聞かずに、行く宛もなく自宅を飛び出した。
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