友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
 2人と過ごした期間は短いけど、それだけはよくわかっている。
 だからこそ、黙ってスマートフォンを預けた。

『菫さん!? 今、どこに――』
「嫁は預かった」
『誰だよ、お前……!』
「今から、話を聞きに行く」
『俺はあんたに、伝えたいことなんか……』

 九尾くんは手慣れた手つきで通話をスピーカーに変更すると、苛立ちを隠せない様子で吐き捨てる蛍くんへ一方的に宣言した。

 しかし、激昂しているからか。
 どうにも話が噛み合っていないように聞こえる。
 彼女はこのままでは電話に出た意味がないと悟り、慌てて2人の間に割って入った。

「ちょ、ちょっと待って! たろーちゃんが会いに行くから! 寝ないで待っててね?」
『九尾さん……?』
「そうだよ! 半日、頭を冷やすよーに! それじゃ、お休みなさーい!」
『ちょっと待て! 菫さんと話を……!』

 こうして旦那さんから私のスマートフォンを受け取った莉子ちゃんは、あっという間に通話を切断してしまった。
< 125 / 238 >

この作品をシェア

pagetop