友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
6・こんなにも彼女を愛しているのに(蛍視点)
「こんな思いをするくらいなら、友情結婚なんてしなきゃよかった……!」
彼女は瞳から大粒の涙を流して、走り去る。
俺はその姿を呆然と見送ることしかできず、その場に力なく膝をつく。
「なんであんたが、泣くんだよ……」
――ずっと、好きだと伝える機会を窺っていた。
『あなたが新人くん? 私、指導係の桐川菫! よろしくね!』
明るくて、元気で、おっちょこちょいな性格の先輩は、社内を明るく照らす太陽のような女性だ。
情報を仕入れている暇がないくらい仕事熱心のくせして、ファッション関係のトレンドや最新事情には恐ろしく詳しい。
寝る暇を惜しんで仕事に熱意を注ぐ姿は、俺がどれほど真似したって手に入れられない姿勢だった。
――初めて異性を好きになった。
この人を、誰にも渡したくないと思った。
だから、部下と言う立場を利用して彼女の周りをうろつき、菫さんを狙う男達に牽制をし続けた。
先輩は俺のもの。
絶対に、奪われて溜まるか――。
そんな思考を表に出さないように己を律していたら、自然と口数が少なくなった。
元々、本音を隠すためにいい人を演じるのは得意なほうだ。
だから、この会社ではなんの違和感もなく俺のキャラは受け入れられた。
彼女は瞳から大粒の涙を流して、走り去る。
俺はその姿を呆然と見送ることしかできず、その場に力なく膝をつく。
「なんであんたが、泣くんだよ……」
――ずっと、好きだと伝える機会を窺っていた。
『あなたが新人くん? 私、指導係の桐川菫! よろしくね!』
明るくて、元気で、おっちょこちょいな性格の先輩は、社内を明るく照らす太陽のような女性だ。
情報を仕入れている暇がないくらい仕事熱心のくせして、ファッション関係のトレンドや最新事情には恐ろしく詳しい。
寝る暇を惜しんで仕事に熱意を注ぐ姿は、俺がどれほど真似したって手に入れられない姿勢だった。
――初めて異性を好きになった。
この人を、誰にも渡したくないと思った。
だから、部下と言う立場を利用して彼女の周りをうろつき、菫さんを狙う男達に牽制をし続けた。
先輩は俺のもの。
絶対に、奪われて溜まるか――。
そんな思考を表に出さないように己を律していたら、自然と口数が少なくなった。
元々、本音を隠すためにいい人を演じるのは得意なほうだ。
だから、この会社ではなんの違和感もなく俺のキャラは受け入れられた。