友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
 たくさん悩んで、絶対に失敗しないように下調べをしたはずだった。
 しかし、努力は実を結ぶことなく無様な醜態を晒してしまったのだ。
 こんな状況で今まで通りの関係になど、戻れるはずがない。

 いっそのこと、壊してしまおうか。
 己の屈折した思いを彼女に伝え、絶対に結婚してよかったと言わせてやる。
 そうすれば、菫さんの夫を名乗る男は生涯俺だけになるだろう。

 ――問題は、先輩がこちらをどう思っているのかがわからないことだけか……。

 とにかく、1人で悩んでいたって仕方ない。
 愛しい妻を呼び戻そうと、何度も電話をかける。
 しかし、いつまで経っても明るい声が聞こえてくることはなかった。

 着信拒否されていないだけ、まだマシだ。
 そうポジティブに考えなければ、やっていられない。

 ――菫さんは、真面目な性格だ。
 ここを飛び出して行ったところで、俺と顔を合わせるのが気まずくて会社を休むタイプではない。
 むしろ、残業だと偽って麗出版に出社している可能性が高い。

 今もなお作業に明け暮れる同僚に、探りの連絡を入れるか? 
 だが、タイミングよくスマートフォンを見てもらえるかは怪しいものだ。
 仕事中の社員は、1分1秒も無駄にしたくないほど追い込まれているのだから……。
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