友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
 ――俺は御曹司として、幼い頃から孤独に生きてきた。
 信じられるのは、自分だけ。
 そうやって言い聞かせてきたはずなのに……。

「菫さんは、そんなに口は悪くない。可憐で、聖女のように清らかな心を持っている」
「恋は盲目。よく言ったものだな」
「うるさい」

 こいつと菫さんにだけは、心を開かずにはいられなかった。
 それは付き合いが長いからでもあり――彼女を、愛しているからでもある。

 口では否定していても、頭の中ではいつだってあの人のことだけを考えていた。

 俺は菫さんに、なんて言えばよかったのだろう? 

「寝る」
「あ、おい! お前の寝床は床だ!」
「このソファーは俺が占拠した」
「ふざけんな!」
「ぐぅ……」
< 135 / 238 >

この作品をシェア

pagetop