友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
7・別れを切り出したあと
「ディレクターさん! 頑張って!」

 九尾夫妻には、たくさん迷惑をかけてしまった。
 なのに、莉子ちゃんは笑顔で私を会社へ送り出してくれる。
 その姿に勇気をもらい、どうにか出社はしたんだけど……。

「おはようございます」

 ――き、気まずい……! 

 社内で顔を合わせた蛍くんは、いつも以上に増して無表情だった。
 多分あれは、怒っている。
 でも、プライベートなことだから……。
 それを発散できず、ぐっと堪えてる。

「菫さん」
「しゅ、取材に行って来るね!」

 隠し事が苦手な私よりも、よっぽど大人だ。
 いい方向に進む未来が見えなくて、嫌われるのが怖くて。
 適当な理由をつけて姿を消し、社内に戻ってきてもすぐに話しかけられないように彼を避ける。

「す……」
「ごめんね! あとで聞くから!」

 忙しく走り回って、仕事に集中して。
 どうにか退勤時間までは乗り切った。

 ――どうしよう! 仕事が終わったら、蛍くんと話し合いをするしかなくなっちゃう……! 

 どうにかして仕事をかき集めて、徹夜で残業しなきゃ! 
 そう思うのに、こんな時だけはだいぶスケジュールに余裕があった。
 もう、勘弁してほしいよ……。
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