友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
 蛍くんに見つからないよう、ひと目を盗んでこっそり帰るしかないよね……。

「ねぇ。あれ、何?」
「桐川さんと伊瀬谷くん、喧嘩中なんだって」
「へー。ついにか」
「随分長く持ったね。2年かぁ……」

 同僚の心ない会話も、普段の私だったら右から左。
 全然気にならないけど……。
 今日の私は、情緒不安定だからかな。
 なんだか、うまく処理しきれないや。
 仲違いをしているって、みんなにバレてる。
 仕事に影響が出たら、最悪の場合はクビとか……。異動なんて話にもなりそうだ。

 嫌だなぁ。
 こんなことになるなんて、思ってもみなかった。
 私はもっと、気をつけるべきだったんだ。

 こうなったら、奥の手を使うしかない……! 
 私はこれ以上周りに迷惑をかけないため、上司に「有給届」と書かれた1枚の紙を叩きつける。

「3日間、頭を冷やさせてください!」

 笑顔で送り出してくれた莉子ちゃんには、申し訳ないけれど……。
 こんな精神状態で、蛍くんの話を聞くなんて絶対に無理! 
 こういう時は、何もかも忘れて現実逃避するのが一番だ! 

「わかった」
「ありがとうございます!」

 やった! 
 これで私は自由だ! 
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