友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
「先輩。ここの記事、空欄のままですけど……」

 そんな私の決意が、実を結ぶことはなかった。
 部下から、想像もしていなかった指摘を受けたからだ。
 何度も見ても、そこは真っ白な空間がぽっかりと空いているだけで……。

「嘘!?」

 慌ててテーブルの上を探すが、掲載予定の原稿は見つからない。

「ちょっと待って……!」

 メールを引っ掻き回して、ようやくそれが自分のミスだと気づく。
 ――あまりにも忙しすぎて、ライターへ執筆依頼をし忘れていたのだ。

「最悪……」

 こんな凡ミス、新人時代にだってやらかしたことなかったのに……!

 部下の前で恥ずかしいとか、プライベートに現を抜かして注意力散漫になっていたなんて言い訳は通用しない。
 特集ページにぽっかり穴を開けたまま刊行なんて事態だけは、絶対に避けなければならなかった。

「アポ取り、しますか」

 彼はこちらがパニックに陥っている様子を見て、助け舟を出そうとしてくれた。
 しかし、その手を掴んだら部下の貴重な睡眠時間まで奪う羽目になる。
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