友情結婚って決めたのに　隠れ御曹司と本気の恋をした結果
「話し合いをする前から、勝手に決めつけないでください」
「蛍くんは私の気持ちがわからないから、そんなことが言えるんだよ……！」

　蛍くんにとって私は、心を揺れ動かす必要がないと思われていたんだ……。
　そんな悲しみで頭の中でいっぱいになったせいか、彼を傷つけてしまいかねかい言葉ばかりが脳裏を過ぎった。

　――このままじゃ、駄目だ。

　そう思ったから、離れようと決意する。

「このままお話し合いを続けても、喧嘩になるだけだから。私、少し頭を冷やしてくるね」
「そのまま俺の前から姿を消すつもりなんですよね。そんなの、許せません」
「蛍くん……」
「こんなふうになるなんて、想定外もいいところなんですよ。俺は菫さんと、ずっと一緒にいたいから結婚したのに……」

　だけど、蛍くんは納得してくれなかった。
　どうして思い通りにならないんだと言わんばかりに己のいだく気持ちを吐露した彼は、にこやかな笑みを浮かべて問いかける。

「それって、一体どういう……」
「気になりますよね？」
「で、でも……」
「有給、撤回してください」

　彼は有無を言わさぬ表情で、こちらを凄む。
　その目は笑っていなかった。
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