友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
 私は自分が伝えたいことだけを大声で言って満足すると、襖を開けてその場から退出を試みる。

 高級料亭でこうした言い争いは珍しいのか、和服姿の店員さんらしき女性が廊下で迷惑そうにこちらを見ている時はどうしようかと思った。

 けど……。
 迷惑料やらなんや
 らは、両親が払えばいいだけだ。
 私は知らない!

「あの……」
「迷惑かけた分は、全部中へいる人達に負担してもらってください!」
「お連れ様が……」
「帰ってもらって、構いませんから!」

 まったく関係ない店員さんにまで当たるほど精神的な余裕が失われている。
 それに気づいて自己嫌悪に陥りながら、足早に出入り口を目指す。

「すみません。急いでいるので、もう……」
「こ、困ります! 確認が取れないと、中には……っ」

 すると前方から、カウンターで女性店員と言い争う男性がいるのに気づく。
 それが大好きな人だと知り、歩みを止めた直後――ばっちりと、目が合った。

「菫さん!?」

 彼は私の名を呼んだ直後、喜びと安堵がグチャ混ぜになった表情を見せると、力強く手首を引いて腕にいだく。
 痛いくらいに強く抱きしめられ、あっという間に絡め取られる。
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