友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
 それをじっと見つめていれば、遠慮はいらないと言わんばかりにずいっとこちらに向かって商品を差し出される。
 ここで断るわけにはいかず、素直にお礼を言って受け取る。

「ありがとう」
「いえ。俺は、これくらいしか出来ないので……」

 彼はその後、重い足取りで椅子から立ち上がる。
 帰り支度を始めたあたり、どうやらようやく上司の言う事を聞く気になったようだ。

「ほんとに、無理しないでくださいね」
「うん。心配してくれて、ありがとう! 私は、大丈夫だよ!」
「信じます。お疲れ様でした……」

 伊瀬谷くんはあまり元気のない様子を見せながらペコリと頭を下げると、オフィスを出て夜の街へ消えて行った。

「はぁ……」

 彼からもらったおにぎりのフィルムを開封して、ぱくりと一口含む。
 その後もぐもぐと咀嚼し、栄養ドリンクとともに胃の中へ流し込んだあと、深い溜息を溢す。
 食事を摂取している間しか、心休まる時間などないからだ。

 ――まさか部下から友情結婚を求めれるなんて、思ってもみなかったな……。
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