友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
「そんな状態で、まっすぐに育つわけがないんです。あまりにも母が憎くてどうしようもなくなり、社長の座を継いでから派手な不祥事を起こして、地獄に落とそうとしました」
「そんな……」
「あの会社で働いている、なんの罪もない社員を巻き込むことになるので……。従兄弟からも自爆だけはやめろと諭されたこともあり、踏み止まりましたが」

 苦痛から開放されたいと願った結果、最悪な結末を迎えようとした直前で踏み止まる。
 想像を絶するような苦痛をいだいていなければ、考えもしない状況としか思えなかった。

 ――どうしてもっと、早くに彼と出会えなかったんだろう?

 幼馴染だったら、蛍くんのそばにいたら。
 こんなに不安な気持ちにはさせなかったのに。
 そう、考えずにはいられなかった。

「俺は菫さんが思っているほど、いい部下ではないんですよ。全部、幻想です」
「そんな……!」
「あなたにだけは、どうしても嫌われたくなかった」

 傷ついた彼の過去を思って唇を噛み締めている姿を目撃し、蛍くんは別の意味に捉えたようだ。
 自分しか知らない過去を語り終えたあと、私の話に移る。
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