友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果

「3年ほど前。求人雑誌を見ていた時、メンズローダーの表紙が目に入りました」

　メンズローダーとは、麗出版から発行されているメンズファッション誌だ。
　入社直後は人手が足りないと言う理由から、世の中の男性達へ女性にモテるファッションテクニックを伝授するため、その雑誌の編集を担当していた。

「新入編集社員の奮闘記という大きな見出しが気になって、雑誌を購入したのですが……。記事を読んだあと、感銘を受けました」

　蛍くんの目にしたインタビュー記事は、人手が足らない麗出版社に新しい風を吹き込むための対策だった。

「菫さんは男性ばかりの職場で怒られても、文句を言わずに仕事へ取り組んでいた。もちろん、脚色された部分もあるとはわかっています。でも……」

　それは功を成し、何人かの社員を採用できた。
　だが、いいことばかりではなかった。

「あの雑誌を見て、明確なビジョンが見えたような気がしました。俺もこんなふうに、仕事にやりがいを感じてみたい。そう思ったから、一縷の望みをかけて実家を飛び出しました」

　あの雑誌を見た入社希望者の中には、私的な交流をしたいと願った人々が何人かいたのだ。
　彼らと一緒をするわけにはいかず、私は念願の女性編集部へ異動となった。