友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
「たとえ、たくさんの人に迷惑をかけるとわかっていても……。恵まれた環境から逃げ出し、自分の脚で歩いてみたかった。その願望が叶ったのは、菫さんのおかげです」
「そんな……。私は、何もしていないのに……」

 私に憧れをいだく蛍くんが入社してきたのは、最高のタイミングだった。
 もっと早くに面接を受けていれば、採用は見送られていたはずだから……。

「菫さんはどんなに仕事で大失敗をしても、諦めることなく最後まで全力で取り組み、挽回しましたね。その根性や粘り強さは、俺にはないものなので……。麗出版に就職して、その光景が間近で見られて本当によかったと思っています」
「蛍くん……」
「あなたは俺の憧れでもあり、目標でした。菫さんを支えるに相応しい男になるためには、本当の自分なんか見せちゃいけない。そうやって己を律することで、壁を作っていたんです。でも……」

 彼は悲しそうに目を伏せたあと、自分の近くに置かれたLEDライトのスイッチを消した。

 勝手に操作していいんだろうかと言う思いと、表情を見られたくないんだろうなという気持ちが交差する。
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