友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
「でもね? これだけは、覚えていてほしいの」

 いつまでも逃げているわけにはいかない。
 そう覚悟を決めた以上は、しっかりと向き合いたいと願っている。

「別れを決断した私を、諦めないで追いかけてきてくれた時と同じように……。どんなに嫌がられたとしても、力になりたい。そう、思うから」

 だからこそ、蛍くんに向かって両手を差し出した。

「2人で一緒に、考えよう?」
「菫さん……」
「私達が、幸せになる方法。きっと、見つかるよ!」

 満面の笑みを浮かべて提案すれば、夫ははにかんだ笑顔を浮かべる。
 その後、指先を絡め合った。

「ありがとう、ございます」
「こちらこそ! こんなにおいしいご飯が食べられる場所に案内してくれて、本当にありがとう!」

 せっかくデートをしているのだ。
 暗い顔で過ごすよりも、彼には楽しんでほしい。
 そう、思うから。

「後半戦! 全力で、楽しもう!」

 私は蛍くんの手を引き、レストランを出た。

 ずっと隠し続けていた思いを打ち明けたのが、気まずかったのだろうか。
 それとも、アルコールを摂取したせいで酔いが回っていたのか……。
 蛍くんは次のアトラクションが始まる直前まで、ぼんやりとしていた。
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