友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
「もしかして、酔ってる?」
「俺は菫さんが好きだ」

 念の為問いかけてみれば、案の定危険な状態だった。
 でも――夫から真っ直ぐな愛を向けられたら、彼を寝かせなきゃいけないという判断よりも喜びが勝ってしまう。

「誰よりも、何よりも。世界で一番、あなただけを愛してる」
「そ、それは嬉しいよ? でもね? この状況だと、嬉しさが半減しちゃうの」
「なんでだよ」
「こういう大事なことは、お酒の力を借りずに言ってほしいって思うのは、我儘なのかな……?」

 彼は取り繕うのをすっかり忘れ、丁寧語ではなくなっている。
 普段の物腰柔らかな口調とは異なるギャップに、心臓を高鳴らせた。
 しかし、そんな場合ではないとすぐ我に返り、問いかけた。
 すると、蛍くんは顔を覆ってぽつりと呟く。

「言えるわけ、ねぇだろ。こんな、恥ずかしいこと」
「そう、なの?」
「ただでさえ年下で、情けねぇところばっか見せてんのに……。まっすぐに愛なんか、囁けるわけが……」

 どんどんと声が小さくなっていくあたり、それは間違いなく本心なのだろう。
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