友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
「倒れて数日間使い物にならなくなるのと、今すぐに帰って寝るの。どっちがいいですか」
「帰る……」

 私が病欠すれば、心配して苦言を呈する部下だけではなくみんなに迷惑がかかる。
 それだけは嫌だと思い直し、渋々帰り支度を済ませて椅子から立ち上がった。

「背中、乗ってください」
「え!? いいよ! 重いし!」
「千鳥足で転倒されたら、困ります」
「酔っ払ってるわけじゃ、ないんだけどなぁ……」
「似たようなものですよ」

 伊瀬谷くんはその場でしゃがみ、私に背を向ける。
 彼はこちらが嫌がる素振りを見せても、いつまで経っても立ち上がる様子がなかった。

 ――私が頼るまでは、意地でもここを動くつもりはないんだろうな……。

 そう悟り、肩を竦めて声を発する。

「噂になっても、知らないよ?」
「俺は気にしません」
「じゃあ、遠慮なく……」

 伊瀬谷くんの返答は、こちらの想定通りだった。
 ここで言い合っても無駄な時間を消費するだけだと渋々納得し、私は彼の背中に飛び乗る。

「桐川さんが了承してくれさえすれば、夫婦になるわけですし」
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