友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
 ――ずっと隠していた気持ちを吐露して、満足したからか。
 眠気に負けてしまったようだ。

「もう。こんなところで寝たら、風邪引くよ……?」

 私は苦笑いを浮かべながらも、無理に彼を叩き起こすようなことはしなかった。

 ――たまにはこう言うのも、悪くないかな。

 蛍くんは普段、年下とは思えないほどにしっかりとしているし……。
 なかなか私を、頼ろうとしてくれなかった。

 ――なんだか手のかかる弟が出来たみたいだね。

 彼の意識がないのをいいことに、好きなだけ背中を優しく撫でつけて温もりを堪能する。

「幸せだなぁ……」

 蛍くんとお話できたら、もっと多幸感に包まれていたと思えば悔やまれることも多いけれど、それはまたの機会に取っておけばいいだけだ。
 私は人知れず優越感に浸りながら、ゆっくりと目を閉じた。
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