友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
9・人生の岐路
 ――この間のデート、楽しかったなぁ……。

 蛍くんの意外な一面や内面を知れて、とても有意義な時間だった。
 このまま穏やかな日常が、ずっと続けばいいのに……。

 そんなこちらの思惑は、悪態をつく夫の声によって霧散する。

「彼女かよ……」

 蛍くんはスマートフォンを片手に、露骨に嫌そうな顔をした。
 その時点で目の前にいる私への苦言ではないとすぐにわかったけれど、そのままスルーするわけにはいかなくて……。
 仕事の手を止め、夫に声をかける。

「蛍くん? どうしたの?」
「ああ……。瑚太朗から、鬼のように連絡が来てまして……」
「あれ? 九尾くんのこと、名前で呼んでたっけ……?」
「従兄弟なんですよ」
「そうなの!?」

 彼に従兄弟がいるという話は、この間聞いていた。
 しかし、それが九尾くんなど思いもしない。

 ――言われてみれば、ちょっと顔たちが似てたかも……? 

 私は脳裏に2人の姿を思い浮かべながら、彼に問いかける。
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