友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
「下で、莉子も待ってる」
「莉子ちゃんが?」
「嫁も一緒なら、来るだろ」
「菫さんまで、巻き込むつもりか……!」
「彼女も、親族だ」

 伊瀬谷家のお母様が大変な状況にある中、呑気に仕事へ打ち込んでいる場合ではないだろう。
 蛍くんが嫌だと言っている以上、私が決断するしかないよね。

「わかった」
「菫さん!?」
「仕事を切り上げて、帰ろう?」
「ですが! まだ……っ」
「明日早めに出社すれば、なんとかなるよ。ね?」

 すでに定時は過ぎている。
 残業せずに帰宅して苦しむのは、明日の自分達だ。

 ――緊急事態なんだもん。
 仕方ないよ。

 私はそう納得すると、笑顔で帰り支度を始めた。
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