友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
「感謝する」
「気にしないで? 早く行かないと。莉子ちゃんを待ちくたびれさせちゃう」
「面会時間は、とっくにすぎてるだろうが……」
「そんなもの、どうとでもなる」

 篝火グループは確か、系列の病院も運営していたはずだ。
 社長の一大事ともあれば、融通は利くのだろう。

 ――さすが、偉い人は違うなぁ。

 いまだに納得できずに苛立つ夫の姿を生暖かい目で見守るのを止め、私は蛍くんの分も荷物をまとめて彼の背中を叩いた。

「ほら! 行こう! 時間がもったいないよ!」
「持つべきものは、姉さん女房……」

 ぼそりと低い声で紡いだ九尾くんの感想を聞いたからか。
 蛍くんは「覚えてろよ」と言わんばかりに従兄弟を睨みつけたあと、渋々退社した。
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