友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
「ディレクターさん! 久しぶりー!」
「莉子ちゃん。この間は、本当にありがとう!」
「どういたしまして!」

 移動中の空気は、最悪だった。
 私と莉子ちゃんが再会を喜びながら話に花を咲かせていなければ、男性陣達は喧嘩でも始めそうな勢いだ。

「この2人って、いつもこんな感じなの?」
「そうだよー?」

 2人の様子を見かねて問いかければ、思いもよらぬ言葉が帰ってきた。
 どうやら、これが通常運転らしい。
 彼の口から従兄弟の話が出てくるあたり、本当に不仲ってわけではなさそうだと思っていたのに……。
 その予想は、どうやら大外れだったようだ。

「たろーちゃんは、そうでもないけど……。旦那様のほうが、いっつもピリピリしてるの」
「確かに……。普段蛍くんは、穏やかな紳士だけど……。今は、獰猛な獣……?」
「そんな感じー!」

 莉子ちゃんはこの場に不釣り合いな笑みを浮かべると、ケラケラと笑い飛ばす。

「これからどーなるかわかんないけど、莉子達は仲良しでいたいよね!」
「うん……」
「ディレクターさん、旦那様を支えてあげて。多分、このあと……。荒れると思うから」
「が、頑張る……」

 病院に到着した私達は、受付を経由せずに馴れた様子で歩みを進める九尾くんの背中を追いかける。
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