友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
「本日づけで、退職します」

 ――蛍くんの退職宣言は、社内をざわつかせた。
 入社してから今に至るま、? 大きな問題を起こさず黙々と仕事に取り組んできたのだ。
 そんな彼がいなくなるのは困ると、当然上司は難色を示した。

「退職理由は……?」
「家庭の事情です」
「まさか、夫婦揃ってなんてことは……」
「今のところ、その予定はないです!」
「随分と含みがあるなぁ……」

 蛍くんが私と一緒じゃなきゃ力が出ないと言うのであれば、編集者を辞めざる終えないのだ。
 現段階では、ずっとここにいますなんて口が裂けても言えなかった。

「伊瀬谷が担当している箇所の引き継ぎは、どうするつもりだ?」
「私が代わりに、全部やります!」
「仕事量が2倍になるんだぞ。こなせるのか?」
「き、気合でなんとか……!」
「ミスが多い桐川と、真面目な伊瀬谷……。いいコンビだっだんだがな……」

 上司には残念がられたが、こればかりはどうしようもない。
 蛍くんは申し訳なさそうに、平謝りを繰り返した。
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