友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
10・これからも、2人で一緒に

「やっと落ち着いたー!」

 溜まりに溜まった2人分の仕事を分片づけ、ようやく要領よく捌けるようになったのは蛍くんが転職してから半年後のことだった。

 少し余裕があるため、明日は1日自宅でゆっくりできそうだ。

 ――急に暇になったから会おうよなんて言ったって、都合がつかないよね……。

 私は駄目もとで、夫へ連絡を取る。

『やっと時間が取れたので、これからお家に帰るね』

 その後無事に自宅へ到着しても、返事は一行に返って来ない。

 ――月末だから、忙しいのかな……?

 元気な声だけでも聞ければいいと思っていたが、そんな暇もないレベルなら待っているだけ損だ。

『お仕事、頑張ってね』

 いつまで経っても既読にならないメッセージを追加で送ったところで、無意味だとわかっていても――相手を労る気持ちが大事だと思い直し、送信ボタンを押す。

「淋しくなんて、ないんだから」

 そう何度も自分に言い聞かせた私は、近くにあったクッションを抱き寄せて眠りについた。
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