友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果

「うぅ……」

　腹部が締めつけられるような圧迫感をいだき、呻き声を上げながらゆっくりと瞳を開く。
　真っ先に飛び込んできたのは、口元を綻ばせてご機嫌な様子でこちらをじっと見つめる、夫の姿だった。

「蛍くん……？」
「すみません。起こしてしまいましたか」
「お仕事は？　もう、いいの？」
「よくはありませんが。父親に任せて、抜け出してきました」
「大丈夫……？」
「菫さんが休みを取って自宅で身体を休めるなんて、滅多にない機会ですから。絶対に逃せません」

　蛍くんは久しぶりに妻の温もりを思う存分堪能できるのが、嬉しくて仕方ないのだろう。
　こちらが嫌がる素振りを見せずに大人しくしているのをいいことに、頬擦りまでし始めた。

「やっぱり、駄目ですね。菫さんがいないと、腑抜けになってしまいます」
「社長業、大変……？」
「徹夜と言う概念がないので。出版社勤めの時と比べれば、だいぶ楽ですよ。ただ、会食に付き合わされる機会が増えて……」
「いいなぁ。おいしいもの、たくさん食べれるね！」
「そうやって、ポジティブに考えればよかったのか……」

　目に見えてわかるほどの溺愛っぷりに、こちらも愛されているなぁと実感して嬉しくなる。
　そうして雑談を続けていると、蛍くんは優しく微笑みながら愛を囁く。