友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
「やっぱり、俺は菫さんが大好きです」

 私も同じ気持ちだと伝えたい気持ちでいっぱいだったけれど、どうやらこの話には続きがあるらしい。
 私はその言葉をぐっと飲み込み、己の身体に触れる腕に優しく触れるだけに留めた。

「あなたがいたからこそ、脇目も振らずに仕事へ取り組めた。ですが、今は……。やりがいは、正直言えばないですね。どれほど真面目に明け暮れても、ご褒美がありませんし」
「ごめんね。今までずっと、お家に戻ってこられなくて……」
「いえ。菫さんが1人で処理しきれない仕事を抱え込む羽目になったのは、俺のせいですから」

 私には私の苦悩があるように、蛍くんにも彼にしかわからない苦痛がある。
 それを分かち合うためには、一刻も早く面と向かって言葉を交わす機会を作る必要があった。

「こうやって触れ合えて、本当によかったです」
「うん。不安だったよね……」

 倒しても倒しても、次から次へとお仕事はやってくる。
 それは蛍くんも一緒なのだろう。

「やっぱり、私が決断するしかないのかな……」
「菫さん?」

 心の中で呟いたつもりだったのに、どうやら声に出てしまっていたらしい。
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