友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
「でも、それが最善だと思うの」

 だけど、仕事と蛍くん。
 どちらか1つしか選べないのなら――私は後者を選びたい。
 そう、思うから。

「このまま貧乏くじを引いた蛍くんだけが苦しんで不幸になる姿を間近で見るなんて、絶対に嫌」
「本当に、いいんですか」
「うん。ファッション雑誌を作るのは大変だけど、激務だし……。体力的にも若くないと続けられないでしょ? ちょうどいい引き際だと思ってる」

 この選択をすれば、蛍くんと今まで通りずっと一緒にいられるのだ。
 悪いことばかりではないし、彼のせいで大事なキャリアを捨てる羽目になったと逆恨みするつもりはなかった。

「後悔しますよ」
「うんん。心配いらないよ。元々、今の職業が絶対いいってわけじゃないの。蛍くんが私を雇ってくれるのなら、問題ないかな」
「大好きな人に、取り返しのつかない選択を迫るなんて、最低だ……」

 蛍くんはこちらがどんなに優しい言葉をかけても、自分を責める。

 これからも豊かな夫婦生活を続けていくために仕事を辞めるか、夫と決別して編集者としてのキャリアを邁進していくか。
< 226 / 238 >

この作品をシェア

pagetop