友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
 その2択のうち前者を選ぶことになったのは彼が蛍火グループを継ぐと決めたせいともなれば、そう思うのも仕方ないだろう。
 蛍くんからしてみれば、私は編集者を志すきっかけになった憧れの人なのだから。
 自分のせいで仕事を辞めると言われたら、私だって考え直してほしいと引き止めたはずだ。

「あのね。蛍くんに結婚を持ちかけられるまで、乗り気じゃなかったのは、こうやってすれ違うだろうなって容易に想像ができたからなの」

 でも、このままじゃ絶対によくない。
 そう、思うから。
 私は悲しい結末を迎えないために、説得を続けた。

「一生すれ違ったままじゃ、夫婦になった意味もなくなっちゃう……」
「俺が惚れたのは、編集者の菫さんです」
「大好きな夫が苦しまないようにそばで支えたい。そう思って秘書になると決めた私は、恋愛対象外なの?」
「それ、は……」
「肩書きなんて、関係ないよね? 私達は、そんなのが気にならないほどに、楽しい日々を過ごしてきたんだから!」

 ――友情結婚のままだったら、蛍くんを好きになれなければ、どうして私が編集者を辞めなくちゃならないんだろうと不満に思っていた。
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