友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
 でも……。
 心の底から彼の支えになりたいと決心出来たのは、彼と思いを通じ合わせたからこそだ。

「蛍くんの負担を減らすために、九尾くんもサポートに入ってくれたんでしょ? これは夫婦だけの問題じゃ……」
「あいつの名前なんか、聞きたくない……!」

 私が秘書として支えられるようになれば、九尾くんを巻き込まなくて済む。
 モデルのお仕事に集中できるのだ。
 蛍くんと一緒にいられるし、手伝ってくれる従兄弟の負担も減らせる。
 いいことづくめだと喜べば、嫉妬の炎が燃え上がる。

「だったらなおさら、そばにいるほうがいいよ。ずっと一緒なら、よそ見しててもすぐに止められるもの」
「菫さん……」

 バツの悪そうな表情をする彼に心配いらないと首を左右に振り、安心させるために優しく頭部を撫でた。

「今の蛍くん、大きなわんちゃんみたい」
「かわいいよりも、かっこいいが似合う男を目指していたのですが……。無理はやはり、よくないですね」

 蛍くんはだんだん落ち着いてきたようで、苦笑いを浮かべる。
 夫の機嫌が治ってよかったとほっとしていると、真剣な表情でこちらを見下す彼と目が合った。
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