友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
 私は従来の明るさを取り戻し、蛍くんと思う存分触れ合う。

「今日は甘えん坊ですね」
「だって……。蛍くんとこんなに長い間、離れていたことなんてないでしょ?」
「はい」
「これからは、またずっと一緒にいられるんだと思ったら、嬉しくて……。この喜びを、全身で伝えたくなっちゃった」
「菫さんは俺をその気にさせるのが、本当に上手ですね」

 私が胸元から顔を上げると、不敵な笑みを浮かべる彼と目が合った。

 その姿に見惚れていると、流れるような動作で唇を奪われる。

 ――先程までの憂鬱な気持ちは、いつの間にかどこかへ飛んでいっていた。
 今は、幸せな気持ちでいっぱいだ。

「蛍くん。私と結婚してくれて、本当にありがとう」
「お礼を言わなければならないのは、俺のほうですよ」

 こうして私は出版社を辞める決意を固める。
 翌日には退職届を提出し、晴れて篝火グループの一員となったのだった。
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