友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
「今日からお世話になります! 伊瀬谷菫です! よろしくお願いします!」

 ある日突然大企業の社長夫人が正規の採用ルートをすっ飛ばし、コネで即日入社を決めたのだ。
 社員達がこちらに向ける視線は冷たいものだったが、その程度で屈するほど弱くはない。
 むしろ、俄然やる気になった。

 ――私がいるからこそ、蛍くんが楽しくお仕事ができるようになるんだって、みんなに知らしめなきゃ……!

 私は予定表とにらめっこしながら、どうしたら夫のサポートができるのかを考えて行動をし続けた。

「我が社の製品を、ぜひとも使って頂きたく――」

 私が蛍くんの秘書になってから、数か月前後。
 蛍火グループと親交深い会社の社員が挨拶をしにきたと思ったら、営業のために顔を出したらしい。
 九尾くんが何度も無言で話を遮り退室を促すが、男性は蛍くんの前で堂々とプレゼンをし続ける。

「今なら格安で提供いたしますので……」

 ――次の予定までは、あと30分。夫婦揃って近隣のホテルで、親睦会に参加する予定だ。
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