友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果

　みっともないから止めてほしいと口を挟むが、すべてを言い終わる前に蛍くんが動く。
　彼は取りつく島もなく、お父さんの誘いをピシャリと遮断したのだ。

「聞こえませんでしたか。嫌だと言いました」
「な、なぜ……！」
「あなたは俺と菫さんの仲が険悪になった際、離婚を進めましたね」
「う……っ。それは……！」
「家柄や肩書きで態度を変えるような方と、交流を深める気はありません。金輪際、俺と菫さんに関わらないでください」
「な……っ。大事な娘と、縁を切れと言うのか!?」
「ええ。そうです。あなたにとって大事なのは、己の娘という事実だけ。菫さんの意思は、いつだって二の次だった……」

　お父さんはなぜ断られるのか理解できなかったようで、かなり長い間食い下がる。
　だが、蛍くんは容赦なく拒絶を続けた。

「それを利用して私利私欲を満たそうとするあなたに、施しを与えるつもりはありません」

　こんな状況では、埒が明かないと考えたのだろう。
　拳をわなわなと震わせて憤慨した様子を見せた父は、こちらに向かって「味方をしろ」と促してくる。