友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
「菫! お前も黙っていないで、なんとか言ったらどうだ!」
「いつまでも親の言う事をなんでも聞く子どもだと、思わないでほしいな……」

 私だって、いい大人だ。
 どちらの味方につくべきかくらい、自分の頭で判断できる。
 ここで父親を受け入れる素振りなんかしたら、縁を切った意味がない。

 ――搾取され続ける人生は、もう終わりにするんだ。

 覚悟を決めた私に、怖いものなどなかった。

「偶然、愛した人が社長の息子として生まれただけなの。権力目当てに近づくのはやめて」
「菫……!」
「さよなら、お父さん。お母さんにも、伝えておいてね」

 私は満面の笑みを浮かべ、父親と別れた。

「言いたいことがあるなら、言えよ」

 どさくさに紛れて会場をあとにした直後、蛍くんが苛立ちを隠せない様子でぽつりと呟く。
 その口調が敬語でなかったことから、話しかけられているのは私ではなく空気と化した九尾くんだと言うのはすぐにわかった。
 だからこそ無言を貫き、彼の反応を窺った。
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