友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
「伊瀬谷くんって、だいぶ面白い人だったりする?」
「何を面白いと称するかによりますが。ズレている、とはよく言われますね」
「あー、うん。わかる。独特な間のとり方とか、それっぽい」

 仕事にかかわる話は毎日のようにしても、プライベートに関する雑談なんて今まではほとんどした覚えがなかった。
 そんな状態でも、伊瀬谷くんが独特な感性を持った男の人だと言う事は、すぐにわかる。

 ――もっと素の部分を、表に出せばいいのに……。

 どうして彼はつねに感情を押し殺し、周りに溶け込む努力を一切せずに生きているのだろう?

 それが不思議で堪らずに深い思考に身を委ねていると、彼から新たな話題が提供される。

「桐川さんも、充分普通じゃないとは思いますけどね」
「なんで?」
「俺とこんなに長時間雑談できる人間なんて、親族以外はいないんで」
「伊瀬谷くん……」

 彼にとっての私は、どうやら上司から親友へとクラスチェンジしつつあるようだ。
 あまりにもおかしすぎる距離の縮め方に若干の恐怖をいだいていれば、伊瀬谷くんから即座に厳しい声が飛んでくる。
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