友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果

「今、俺をかわいそうなものを見るような視線を向けましたね」
「なんで分かるの!?」
「桐川さんの考えていることは、なんでもわかります。暇さえあれば、観察しているので」
「ちょっと、やめてよー。そんな暇あるなら、仕事して！」
　不貞腐れているようにしか聞こえない彼の声を聞いていたら、なんだか楽しくなってしまう。
　思う存分大笑いしていたら、いつの間にか憂鬱な気持ちは吹き飛んでいた。

「久しぶりかも。こんなに会話してて、楽しいって思えたの」
「俺と先輩の相性は、いい気がします」
「その根拠は？」

　素直に感じた思いを吐露する。
　すると、伊瀬谷くんは長い沈黙のあとこちらの問いかけに答えてくれた。

「勘、ですかね」
「そっかー……」

　――もしかしたらこの選択は失敗だったと、後々後悔するかもしれない。

「それに賭けてみたいって言ったら、どうする？」

　それでも私は、勇気を出して歩み寄ってくれた彼と、このまま上司と部下関係で居続ける気にはなれなくて……。
　自分から歩み寄ってみようと判断し、伊瀬谷くんに提案した。