友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
2・勢いで法律婚をしちゃった
 無事に夜間窓口へ婚姻届を提出した帰り道。
 私は勢いに身を任せて結婚すると言ったのを、猛烈に後悔していた。

 ――上司と部下と言うだけの関係性で夫婦になるって、やっぱりおかしいよね……!? 

 こんなはずじゃなかった。
 そんな言葉ばかりが、頭の中でぐるぐると回る。

 一生仕事に邁進し続ける人生が、蛍くんの誘いを受けることによって変化し始めたのだ。
 それに得体のしれない恐怖を感じているのは、日頃の疲れが溜まっているからか。

 それともこの年にもなって、未知の体験に飛び込んでいくなど想像もしていなかったからか……。

「菫さんは同棲、したいですか」
「夫婦になったんだから、するんじゃないの?」

 蛍くんもてっきりそのつもりでいると思っていたのだが、どうやらその気はないようだ。
 私にわかりやすく、選択肢を示してくれる。

「いえ。別居婚というケースもありますよ」
「なんか、すごく夫婦間が不仲そうな響きだね……」

 世間一般からしてみれば、夫婦は同居が鉄則だ。
 別居を選択した場合は、周りからよくない事情があるのではないかと勘ぐられかねなかった。
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