友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果

　――これって、蛍くんを恋多き男性だと思っていますって伝えているようなものだよね……。
　先程の発言は、失礼だったかな。

　そう自己嫌悪に陥っていると、彼から思いがけない提案を受けた。

「どうせなら、試してみますか」
「何を？」
「同居」
「それって……」
「俺の家、すぐそこなので。よかったら、どうぞ」
「ええ……!?」

　ご近所さんの迷惑も顧みず驚きを隠せぬまま絶句すれば、あれよあれよと言う間に彼の自宅へ連れ込まれてしまう。

「遠慮せずに、自分の家だと思ってくつろいでください。俺達はもう、夫婦なので」
「あ、うん。ありがとう……ございます……」

　そんなことを言われたって、簡単に気持ちを切り替えられたら苦労はしな
　い。
　異性の家にお邪魔して寝泊まりするなど、始めての経験だ。
　平常通りでいられるはずもなく、思わず他人行儀な反応をしてしまった。

「菫さん、緊張しすぎ」

　すると、そんなこちらの姿がおかしくて仕方がなかったのだろう。
　彼は滅多に変化させない表情を和らげ、タメ口になる。

「敬語……！」
「すみません。つい……」
「うんん。こっちこそ。砕けた口調の蛍くんって始めて見たから、驚いちゃって……」