友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
 こちらの指摘を受け、蛍くんはバツが悪そうに丁寧な口調へ戻してしまう。
 それを残念に思いながらも謝罪をすれば、彼はこちらの反応を窺いながら問いかけてくる。

「菫さんは上司ですし、年上なので。夫婦になっても、これまで通りに接するつもりでしたが……。年相応なほうが、好きですか」
「へ!? いや、全然! どっちでもいいよ!」
「わかりました。では、今まで通りにします」

 焦ってどちらでもいいなんて、言わなければよかった。
 そう後悔したって、一度口から飛び出した言葉は変えられない。

 ――やっぱり取り繕わなくていいよ、なんて……。
 言えないよね……。

 己の願望を伝えるか迷う姿は、彼にとっては早くこの話を終わらせたいと考えているようにしか見えなかったのだろう。

 蛍くんは淡々とした口調で、ある提案をしてくれる。

「今後の話し合いはここまでにして、もう寝ますか」
「いいの?」
「初日から、飛ばしすぎました。これ以上話を続けても、頭には入らないと思うので」
「う……っ。ごめんね!? 不出来な上司で!」
「俺はそんなこと、思いませんよ」
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