友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
 そう考え直し、勢いよく新品のパジャマを開封して身に纏う。
 その後、身支度を済ませてリビングに出た。

「お風呂、ありが……」
「だから、ほんとだって。信じられないなら、紹介する」
「ん?」

 洗面所に繋がる扉を開けたあと、先に上がったことを報告する。
 すると前方から、蛍くんの声が聞こえてきた。
 私には敬語を継続すると宣言した以上、それが別の誰かに向けられているのはすぐにわかる。

 こんな状況で他人を連れ込むわけがないし……。
 電話、かな?

 耳元にスマートフォンを当てている姿を確認して、その考えが正しいことに気づいて反省する。

 ――蛍くんの状況をしっかりと認識してから、伝えるべきだったよね……。

 邪魔しちゃったなぁと申し訳ない気持ちでいっぱいになっていると、彼と目が合った。
 その直後、蛍くんは待っていましたとばかりに手招きする。

「スピーカーにするから」

 あれは、こっちに来いって指示しているんだよね?
 私は電話越しに話している彼の元へ、ゆっくりと近づいた。

「これ、うちの母親」
「は、はじめまして! 桐川菫と申します! 蛍くんとは、上司と部下です!」
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