友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
「できたよ!」
「ありがとうございます」

 ドライヤーのスイッチを切って元の場所に戻してから、声をかける。
 蛍くんは体制を戻したけれど、鏡に映る表情はなんだか浮かない顔をしていた。

 まだ、乾かしきれていないところがあるとか……? 

 私達の間には、気まずい沈黙が流れる。
 それを破ったのは、彼のほうだった。

「随分と、明るい表情になりましたね」
「うん。蛍くんと結婚したおかげで、両親からガミガミ言われなくても済むんだーって、思ったからかな? ストレスから解放されて、とってもハッピーだよ! 今からもう一仕事するのも、悪くないかもね?」

 蛍くんと帰宅するまでは、今にも倒れそうなほどに青白い顔で仕事をしていたのが嘘みたいだ。

「職場で体調を崩して帰宅することになったんですから。今日くらいは、休んでください」
「ここで無理して具合が悪くなったら、元も子もないもん。やめとこうかな……」
「そうして頂けると、俺も安心です」

 彼はこちらの主張に同意すると、リビングに移動してから先程パジャマを持ってくる際に脚を踏み入れていた洋室を指さした。
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