友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果

「菫さんは、ベッドで寝てください」
「蛍くんは？　どうするの？」
「俺は、ここで寝ます」
「身体、痛めるよ!?」

　どうやら、あそこが寝室らしい。

　私は急遽、転がり込んできた身だ。
　家主の代わりにあそこで眠る気にはなれないと断固拒否し、こちらから代替案を提案した。

「一緒に寝よう？　ちょっと、狭いかもしれないけど……」
「男女が寝台で眠ったら、やることは一つしかありません」
「寝るだけだよ……？」

　しかし、彼には真顔で拒否されてしまった。
　どうしてなのかと問いかければ、呆れたように肩を竦められてしまう。

「そうした知識すら、不足しているんですか……」
「え!?　違うの!?」

　私、何か間違ったことを言ったかな？
　そう、不安になるのも無理はない。
　彼が頑なに添い寝を拒み続ける以上、こちらが取れる選択肢はそう多くないからだ。

「添い寝くらい、友達でもするよね？」
「異性同士では、しないかと……」
「ええー。嘘だぁ……」

　遠回しに年下の男の子から、常識がないと批判されてしまった。
　彼が嫌がっているのなら、別々に睡眠を取るしかないだろう。