友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
 ――椅子に座ったまま会社で寝泊まりするのは馴れているし……。
 それはそれで、悪くないかな。

 そう勝手に結論づけていると、深いため息が聞こえてきた。

「結婚相手が、俺でよかったですね。悪意を働く人であったら、大変なことになっていましたよ」
「そうなの……?」
「とにかく、今日は1人で寝てください。いいですね」
「あ、待って! 蛍く……!」

 彼はこちらの言い分を聞きたくないと言わんばかりに私を寝室へ押し込むと、バタンとリビングに繋がる扉を閉めてしまった。

 今の会話のどこに蛍くんの苛立つ部分があったのか、さっぱりわからない。
 私は音を立てないように気をつけながら、恐る恐る扉をゆっくりと開ける。

「いすぎだろ……」
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