友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
 彼はリビングのソファーに座って項垂れたまま、低い声で何かを呟いた。
 しかし、ここからでは距離があってうまく聞き取れない。

 蛍くんは今、なんて言ったんだろう……?
 疑問を解消するには、本人に聞くのが一番だ。
 でも、私はまだ彼の人となりがよくわかっていない。
 ここで茶化して、関係が悪化したら? 離婚なんて話になれば、面倒事が増えるだけだ。

 今日のところは、そっとしておこう……。

 そう考えた私は音を立てないように気をつけながら扉を閉じ、寝室に寝転んだ。
 ふかふかのベッドで眠るなんて、いつぶりだろう……?

 疲れているせいか、あっという間に眠気がやってくる。
 ――夢から目覚めても、蛍くんと結婚した事実がなくなりませんように。

 そう願いながら、目を閉じた。
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