友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
 心外だとばかりに声を荒らげたら、返り討ちにあってしまった。
 どうやら、自分でも知らない癖があるようだ。
 まったく自覚がなかったので、恥ずかしくて仕方がない。
 私は頬を紅潮させながら、感心した様子で声を発する。

「蛍くんって、よく見てるよね」
「趣味なので」
「そうなの……?」
「はい。暇を持て余した時は、人間観察をしています。楽しいですよ」

 彼は口元だけを綻ばせているが、目は笑っていなかった。
 ぞっと背筋が凍るような表情なのに、なぜかとても綺麗だと感じて――目が離せない。

「か、変わってるね……?」
「よく言われます」

 私はうわ言のようにそう伝えるのが精一杯なのに、蛍くんは余裕そうな態度を崩さなかった。

 ――こう言う人が、私にとって理想の男性だったのかな?

 自分でもよくわからないまま思い悩んでいると、この話はもう終わりだと言わんばかりに夫から声をかけられる。

「どうせすぐにバレるので、ありのままの先輩でいてください。そのほうが、きっと楽ですよ」
「わかった。頑張るね!」
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