友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
 ここまで最悪な気分になるなど、思わなかった。
 こうなることがわかっていれば、順番を逆にしたのに……。

 私はやりきれない思いをかかえ、先程まで繰り広げられていた光景を謝罪する。

「ごめんなさい。まさか顔を合わせた途端、結婚を反対されると思わなくて……」
「いえ。想定内です」
「怒らないの……?」
「予想通り過ぎて、呆れの感情のほうが大きいですね」
「酷いことを、たくさん言われたのに……」

 蛍くんは慰めてくれるけど、私は全然納得できない。
 悲しい気持ちを自分だけで処理しきれず、涙声で語る。

「私、悔しいよ。なんであんなこと、言われなきゃいけないんだろう? 由緒正しい家系の生まれなら、わかるよ? ただの一般家庭に生まれただけなのに……」
「菫さんは、ご両親から大切にされているようですね」
「どこが!? 全然だよ!」
「過保護気味ですが……。あれなら、なんとかなりそうです」

 蛍くんはこの惨状を前にしても、勝機を見出したらしい。
 あんなに酷い言葉をぶつけられても涼しい顔をしているのにも驚いたけど、彼は自分が考えているよりも凄い人なんだろう。
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