友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
「もう、いいだろ。これで伊瀬谷の息子が生涯独身でいると後ろ指を刺される謂れはなくなった。子どもは作らないし、跡継ぎは勝手にそっちで見繕ってくれ」
「この程度で息子としての役目を果たしたと威張られては、堪りませんわ。蛍。己に与えられた使命から逃げるのでしたら、代わりまで責任をもって用意して頂きませんと……」
「俺に指図するな。息子だからって何でもかんでも思い通りになると思ったら、大間違いだ」

 蛍くんはどこかで聞いたことのあるような台詞を吐き捨てると、私をグイグイと外へ引っ張り出そうと試みる。
 それに抗い、先程の会話を聞いて思い切って感じた素直な意見を口にする。

「あの。子どもとか、蛍くんが会社を継ぐとか継がないとか。そういうのは、夫婦の問題なので! 2人でじっくりと相談して、答えを出します!」
「まぁ。そうですの。では、答えをお待ちしておりますわ」
「はい! 失礼します!」

 蛍くんのお母様は反対することなく、素直にこちらの言い分を受け入れてくれた。
 それが何よりも嬉しくて。
 私は満面の笑みを浮かべて頭を下げると、伊瀬谷家をあとにした。
< 76 / 238 >

この作品をシェア

pagetop