恋は計算通り、君は想定外

15 恋じゃなくて、立場がほしいだけの彼女

 「そうだが‥‥何で住所を知ってた?」
 「先生に聞いたら教えてくれた」
 「全く」
 個人情報の保護とかどうなってるんだ。
 「で、何の用なんだ?」
 「‥‥うん」
 何か言いにくそうにしている。
 「ちょっとさ‥‥中に入れてくれない?」
 「それはマズイだろ」
 「どうしても相談したい事があるの」
 「‥‥‥‥」
 確かに泣きそうな顔をしてはいる。ここで追い返すのも主人公としては違う気がする。
 「仕方ないな」
 パスワード入れると、ガラス扉がスっと開く。俺のあとに続いて草ケ谷も中に入ってくる。エレベーターを降りるとすぐ隣が俺の部屋だ。
 ドアを開いて部屋の中に入る。
 「お邪魔します」
 玄関できちんと靴を揃えてから中に入ってくる。
 「綺麗にしてるのね」
 「そうか?」
 常に掃除はしてるが、こういう時にそれが役に立つ。
 冷蔵庫から飲み物を出して、ローテーブルの端に座った彼女の前に出す。まだ部屋の中を見渡している。
 「有坂ってさ‥‥オタクとか陰キャだと思ってたけど‥‥違うんだね」
 「そんな事を確認する為に来たわけじゃないだろ?」
 「もー、何か言い方が冷たいし。いっつも表情変えないし‥‥」
 「悪いな、俺はそういう人間なんだ」
 「‥‥‥‥」
 草ケ谷は麦茶を一口飲んでから、フウとため息をつく。
 「今日さ‥‥大井沢君にさ‥‥誰とも付き合ってないなら、私と付き合ってって言ったんだけど‥‥何か少し考えさせてくれって返事で‥‥」
 「‥‥‥‥」
 「それってやっぱり水沢さんと付き合ってるから‥‥はっきりと返事をくれないのかな? ねえ、有坂はどう思う?」
 「そうかもしれないが、本当に迷ってるのかもしれない。もしかしたら、水沢さんと付き合ってはいるけど、草ケ谷も捨てがたいとか考えてるのかもな」
 「何それ、ひどい、そうなの?」
 「一つの可能性を言っただけだ。情報が少なすぎてはっきりとは分からないな」
 「‥‥‥‥」
 「そもそも、お前は大井沢の彼女の位置が欲しいだけで、大井沢の人間性はどうでもいいんだろう?」
 「う‥‥ん」
 「だったら、彼が酷いかどうかは考える必要がない」
 俺も麦茶を飲む、淡いグラスの水面に、草ケ谷の沈んだ顔が上下反転して映っている。
 何を聞きにきたのかと思えば、そんな事か。
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