恋は計算通り、君は想定外

16 二人の同盟は、恋のためじゃなく目的のため

 主要人物以外の事に完全に巻き込まれている。巻き込まれているが、そこで華麗に巻き返す能力があるのが主人公の特権だ。
 だとすれば、ここで俺はどうしたらいい?
 どうすれば本物のヒロインに繋げられる?
 「‥‥そうだな」
 俺は草ケ谷の顔を見つめた。
 今出来るベストな手は見つからないが、ベターな手段はある。
 「俺は水沢さんと付き合いたいと思ってる」
 「え?」
 「そしてお前は大井沢とくっつく‥‥これで全てが丸く収まる」
 「‥‥‥‥そんなうまくいくはず‥‥」
 「いかせる」
 一口で飲み干す。
 「俺の指示した通りに動いてほしい。そうすれば大井沢は必ずお前を選ぶ」
 「‥‥でも」
 「この前と同じだ。少しでも結果が違ってたら、お前には二度と関わらない」
 「‥‥前より悪くなったら‥‥」
 「そうなったら、これから先、お前の言う事を何でも聞く事にする。そうならないように全力で良くはしていくけどな」
 「‥‥分かった」
 草ケ谷は小さく頷く。
 「では、これからよろしく頼む。まずお前が最初にする事は‥‥」
 「陽奈!」
 「?」
 「いつまでも、お前って呼ばないでよ、私の名前はヒナ! 草ケ谷陽奈!」
 「分かった」
 草ケ谷‥‥陽奈は手を伸ばしてきた。
 「よろしく、悠太」
 「‥‥よろしく」
 俺と陽奈は握手した。それは互いの利益が一致した合意の握手だ。
 そうして翌日‥‥する事が決まれば行動は早い方がいい。
 陽奈にはバイトをしてもらう。
 「え? 何で倉庫整理?」
 それを聞いた陽奈はそんな反応だった。陽奈の家からは遠くなるし、別に欲しいものも今の所はない陽奈にとって、それは当然の反応だ。さらに軽作業とはあるが、荷物関係なのでそれなりに大変な事も予想される。
 「大井沢を彼氏にする為に必要な事だ」
 「何で?」
 「とにかく指示通りにしてもらう。そういう約束だ」
 「‥‥‥‥分かった」
 納得してないようだったが、言う通りにしてもらわなければ全てが繋がらない。
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