恋は計算通り、君は想定外
18 恋の布陣図は商店街に広がっている
地図には赤字で丸がつけてあり、そこから矢印が引かれている。
「これって‥‥ゲーセン?」
「その赤丸の地点、ゲーセンの近くで陽奈は待機。俺がケータイで合図するから、そこで作戦は決行になる。どうなるかは現場の状況で変わるから今は言えない。次の水曜日がその日になるが、丁度、バイトも休みだ、何の支障もない」
「‥‥‥‥」
全く納得はしてないようだったが、それでもやってもらうしかない。
陽奈は俺と違ってここの地元の中学からここの地元の高校に入った。つまり周りは、彼女が過去にぼっちだという事を知っている。いくら陽奈がこれからそれを払拭する為に尽力しても、噂というものはそう簡単に消えるものではない。そしてそれを否定する為に自分の口からそれを発しても、ほとんど意味がない‥‥所か逆効果な時すらある。入学当初の陽奈がそれだ。彼女が最初に話していた友人達と思っていたのは、全員県外から来た生徒のみだった。時間が経てば、陽奈の過去も知れ渡り、本物の陽キャに移動していくのも同然だ。
橘愛理は陽キャではないし、クラスで目立つ存在でも、発言力があるわけでもない。
それでも陽奈の代弁者としてこれ以上の適任はいない。
そうして何度もシミュレーションして臨んだ水曜日。
その日の午後は、生物と美術しかない。そして生物の時間は先生が課題を出して読書をするだけであり、美術はそもそも先生が教室まで来ない。そのせいかこっそりと途中で帰る生徒もいる。
“ね、愛理も今日、一緒に行くでしょ?”
“うん、行く行く!”
愛理と話してるもう一人の女子生徒は、石垣みつき。彼女こそ、このクラスの陽キャトップの座にいて、存在感のある彼女の声で何人もの女子生徒がそれに付き従っている。
彼女と特に仲が良いのが橘愛理で、雄二の話だと二人は家が近所の幼馴染のようだ。その二人の仲に入る事は普通なら難しい。
「普通ならな」
俺は陽奈が待機している場所から更に離れた所で、そのゲーセンを監視する。
丁度、その橘愛理と石垣みつきがゲーセンに入っていった。その姿は陽奈にも見えているだろう。
「‥‥‥‥」
ゲーセンは二階建てで、上には筐体を使う大型ゲーム機が、一階にはUFOキャッチャーやプリクラなどが置いてある。ゲーセンに来てしばらくは二人で店内をまわっていたようだが、石垣みつきは今時には珍しい格闘ゲーマーだ。すぐに彼女達は上下の階に別れるはずだ。
=もしもし悠太?‥‥今、石垣さんは二階に上がっていったみたい=
「分かった。合図したら、店内に入って急いで橘さんの手を掴んで店から出てくれ。いいか、タイミングが肝心だからな」
=‥‥りょ‥‥了解=
陽奈との通話を切った俺はすぐに近くの交番に電話した。
「これって‥‥ゲーセン?」
「その赤丸の地点、ゲーセンの近くで陽奈は待機。俺がケータイで合図するから、そこで作戦は決行になる。どうなるかは現場の状況で変わるから今は言えない。次の水曜日がその日になるが、丁度、バイトも休みだ、何の支障もない」
「‥‥‥‥」
全く納得はしてないようだったが、それでもやってもらうしかない。
陽奈は俺と違ってここの地元の中学からここの地元の高校に入った。つまり周りは、彼女が過去にぼっちだという事を知っている。いくら陽奈がこれからそれを払拭する為に尽力しても、噂というものはそう簡単に消えるものではない。そしてそれを否定する為に自分の口からそれを発しても、ほとんど意味がない‥‥所か逆効果な時すらある。入学当初の陽奈がそれだ。彼女が最初に話していた友人達と思っていたのは、全員県外から来た生徒のみだった。時間が経てば、陽奈の過去も知れ渡り、本物の陽キャに移動していくのも同然だ。
橘愛理は陽キャではないし、クラスで目立つ存在でも、発言力があるわけでもない。
それでも陽奈の代弁者としてこれ以上の適任はいない。
そうして何度もシミュレーションして臨んだ水曜日。
その日の午後は、生物と美術しかない。そして生物の時間は先生が課題を出して読書をするだけであり、美術はそもそも先生が教室まで来ない。そのせいかこっそりと途中で帰る生徒もいる。
“ね、愛理も今日、一緒に行くでしょ?”
“うん、行く行く!”
愛理と話してるもう一人の女子生徒は、石垣みつき。彼女こそ、このクラスの陽キャトップの座にいて、存在感のある彼女の声で何人もの女子生徒がそれに付き従っている。
彼女と特に仲が良いのが橘愛理で、雄二の話だと二人は家が近所の幼馴染のようだ。その二人の仲に入る事は普通なら難しい。
「普通ならな」
俺は陽奈が待機している場所から更に離れた所で、そのゲーセンを監視する。
丁度、その橘愛理と石垣みつきがゲーセンに入っていった。その姿は陽奈にも見えているだろう。
「‥‥‥‥」
ゲーセンは二階建てで、上には筐体を使う大型ゲーム機が、一階にはUFOキャッチャーやプリクラなどが置いてある。ゲーセンに来てしばらくは二人で店内をまわっていたようだが、石垣みつきは今時には珍しい格闘ゲーマーだ。すぐに彼女達は上下の階に別れるはずだ。
=もしもし悠太?‥‥今、石垣さんは二階に上がっていったみたい=
「分かった。合図したら、店内に入って急いで橘さんの手を掴んで店から出てくれ。いいか、タイミングが肝心だからな」
=‥‥りょ‥‥了解=
陽奈との通話を切った俺はすぐに近くの交番に電話した。